初夏に旬を迎えるさくらんぼは、甘酸っぱくジューシーな味わいで、大人から子どもまで人気の果物。店頭で販売されているさくらんぼはもちろん美味しいですが、自分で育てたさくらんぼの味はより格別で、開花や実りの季節にはお庭を彩る果樹としても大活躍します◎
今回は、そんなさくらんぼを自宅で育てる際の手順やポイントについて解説します。さくらんぼ栽培は初心者には難しいといわれていますが、きちんとお世話すれば自宅でも十分美味しい実を収穫することができますよ♪
さくらんぼを自宅で栽培するメリットは?
さくらんぼを自宅で栽培する醍醐味といえば、収穫したての新鮮な実を思う存分味わえること!さくらんぼはデリケートな果物で、収穫後はだんだんと品質が落ちてしまいますが、自宅で育てれば収穫したその場で頬張ることもでき、鮮度バツグンの格別な味わいを堪能できますよ。
またさくらんぼは春に可憐な花を咲かせ、初夏には真っ赤な果実がたわわに実ります。食べて美味しいさくらんぼは、育てて楽しく、目で見て癒される植物です。自宅で栽培する際は、ぜひさくらんぼの花や実りの様子も楽しんでくださいね◎
さくらんぼの育て方は?
さくらんぼ栽培は、園芸店などで苗を購入して植え付けるところからスタートします。価格は品種や年生によって異なりますが、一般的に2,000円前後から販売されています。
またほとんどの品種は、自分の花粉が雌しべに付いても受粉しない「自家不和合性」という性質を持っており、さくらんぼの果実を実らせるためには最低でも2種類以上の異なる品種どうしを傍で栽培する必要があります。これをふまえ、苗を購入する際はできるだけ親和性の高い品種を2つ以上用意しましょう。
2024年さくらんぼ人気ランキング
※2024年4~6月のデータ植え付けの方法と時期
さくらんぼの苗を購入してきたら、鉢植えか地植えいずれかの方法で育てていきましょう。できる限りコンパクトに育てたい人は鉢植え、将来的に大きな樹木に育てて大量収穫を目指したい人は地植えがおすすめです。
また苗植えの時期は鉢植え、地植えともに12月~3月が適期です。日光を好むため、日当たり良好な場所を選んでください。植え付けるときには、50㎝~70㎝の高さに切り戻しておくと、綺麗な樹形に仕立てられます。
鉢植え
鉢植えでさくらんぼを栽培する場合、まずは鉢と土を準備する必要があります。一般的な家庭では、7~8号程度の鉢を用意し、それに収まる範囲で栽培するのがちょうど良くおすすめですよ。土の作り方については、この後詳しく解説しますね◎鉢植えの手順は、以下を参考にしてください。
- 底に鉢底ネットと軽石を敷きます
- 鉢の用量に対し1/3~1/2ほどの土を入れます
- さくらんぼ苗の根に付いた土を軽くもみ落とし、鉢の中心に苗を置きます
- 苗を覆うように、周りに土を入れていきます
- 鉢の縁から下2cmほどまで土を入れたら、たっぷりと水をやります
- 根と土が馴染み、株がしっかり固定されたら植え付け完了です
手順⑥で確認した際、株が不安定で倒れそうなときは、1m以上の支柱を立てて支えを作りましょう。
地植え
地植えの場合、植え付け当日までに土を作っておく必要があります。作り方は、植え込み場所に選んだ土に、腐葉土や堆肥を全体の3割ほど混ぜ込んで1〜2週間寝かせておきます。この土を植え込みに使用しますので、必ずあらかじめ用意しておきましょう。地植えの手順は、以下を参考にしてください。
- 日当たりのよい場所を選び、直径80cm深さ60~80cmの植え穴を掘ります
- 株の間隔を4~5mほどあけ、植え穴の中心に苗を置いて周りを土で埋めます
- 途中で何度か揺さぶりながら土を入れて、根との隙間を埋めます
- 根がすぐに乾燥しないよう株元にワラなどを敷いて完了です
さくらんぼを地植えすると、水やりの手間がほとんど必要ありません。ただ夏場の雨が降らない間は乾燥に注意し、適度に水やりしてくださいね◎
さくらんぼ栽培のポイント
ここからは、さくらんぼを育てるうえで大切なポイントについて紹介します。さくらんぼを実らせるためには、人工授粉や摘蕾といった作業が必要不可欠ですが、それ以前に土づくりや水やり、肥料などの基本的なお世話ができていないと元気に育ちません。
さくらんぼの実りを将来的に長く楽しむためにも、基本的な栽培のポイントは必ずおさえておきましょう◎
場所
さくらんぼは日光を好む性質なので、日当たりの良い場所を選んで栽培しましょう。特に地植えの場合、一度植え込むと移動は困難なので、最初の場所選びが肝心です。
また鉢植えの場合も、日当たりが悪いと木が弱ってしまうため、置き場所に配慮しましょう◎太陽の光をたっぷりと浴びるほどさくらんぼの木は元気に育ち、たくさんの美味しい実をつけてくれますよ!
土用
さくらんぼを栽培するときの土は、水はけと水持ちが良い状態にしておけば、特に種類の指定はありません。一般的に売られている用土なら、赤玉土小粒7~8、腐葉土3~2の配合土がおすすめです◎
さくらんぼは根張りする植物なので、地植えの方が比較的良く育ちますが、鉢植えでも配合土で十分育てることができますよ。
水やり
さくらんぼの木は湿気に弱く、土壌が湿っている環境を好みません。そのため水のやり過ぎに注意し、鉢植え、地植えそれぞれの場合で与えるタイミングをしっかりとおさえておきましょう!
鉢植えの場合は、土の表面が乾いたら、鉢の底から水が流れ出るまでお水をたっぷりとあげましょう。なお冬場は少し乾燥気味に管理し、水の与えすぎに注意してください。
地植えの場合は、夏場に雨が降らない日が続かない限り、水やりの必要はありません。基本的に雨水任せで十分育つので、ヘタに水やりをしてしまうと返って根腐れなどの病気の元となります。
肥料
肥料は果実の品質や量に直結するので、適切なタイミングで十分に与えましょう◎発酵油かすなどの有機肥料や、リン酸の多い化成肥料はさくらんぼの生育を助け、よく育ちますよ。
与えるタイミングは、鉢植えの場合は2月、5月、10月の年3回、地植えの場合は2月と10月の年2回が目安となります。
さくらんぼの育て方については、こちらの記事でもご紹介していますので、ぜひご覧ください♪
さくらんぼ栽培に関するQ&A
ここからは、さくらんぼを自宅で育てるうえで気になる問題を、Q&Aの形式で紹介します。
さくらんぼ栽培は決して簡単ではなく、ちょっとした失敗で実がならなかったり、木が枯れてしまうこともあり得ます。そうならないためにも、失敗パターンを先回りしておさえておきましょう◎
さくらんぼの実がならないのはなぜ?
先ほど紹介したように、さくらんぼは「自家不和合性」という性質を持っており、基本的に1本の木や同じ品種どうしの木だけでは受粉することができず、結実しません。また異なる品種どうしであれば何でも良いというわけではなく、できるだけ親和性の高いものを選ぶ必要があります。
例えば、「佐藤錦+ナポレオン」、「高砂+ナポレオン」、「紅秀峰+佐藤錦」の組み合わせは親和性が高く、結実しやすいといわれています。反対に、「佐藤錦+南陽」の組み合わせは結実しません。このように異なる品種どうしでも交配しないものを「交配不親和性」と呼びます。
なお、さくらんぼの味わいは品種ごとにそれぞれ異なり、せっかくなら好みのものを育てたいと思う人も多いはず。さくらんぼの品種ごとの味わいや特徴について詳しく知りたい人は、こちらの記事を参考にしてください◎
さくらんぼの木を大きくしすぎず育てるには?
さくらんぼの枝を伸ばしすぎないためには、年に2回の剪定が必要です。特に鉢植えで育てている人は、あまり大きく育てすぎないためにも、必ず剪定を行ってください。
冬の剪定は12月~2月に行います。長い発育枝を間引き、20㎝~30㎝に切り詰めます。夏の剪定は7月下旬~8月に行い、長く伸びそうな枝を摘心したり、切り詰めておくとコンパクトなサイズに収められます。またさくらんぼは病害虫に弱い植物なので、枝の切り口から病原菌が入らないよう、剪定後は癒合剤を塗るようにしましょう。
さくらんぼの剪定について、より詳しくやり方や時期が知りたい人はこちらの記事も合わせてチェックしてみてください◎
さくらんぼの種から育てることはできる?
さくらんぼを食べた後の種から芽が出ることはありますが、確率はかなり低いといえます。もし芽が出たとしても、病気や抵抗性が低く成木までの栽培はかなり難しいようです。
また、そこから実を付けるまでに成長する可能性はさらに低く、結実させるには他の品種の木が必要になります。そのため実りも含めてさくらんぼを栽培したい人は、苗を購入して育てるのがおすすめです。
さくらんぼの木の寿命は?
栽培の難易度は比較的高いといえるさくらんぼですが、上手に育てれば長年に渡って実りを楽しむこともできます。特に地植えすれば公園に咲く桜のように大木に育ち、成木になれば5000個~1万個以上のさくらんぼを収穫できるようになります。
さくらんぼの苗は4年目頃から花が咲き実を付けはじめますが、成木になるまでに要する時間は約10年です。さくらんぼの寿命は平均で30年といわれていますが、100年を超える古木も現存しています。
さくらんぼを食べてJAさがえ西村山の挑戦を応援しよう!
さくらんぼや桃、りんごなどのフルーツをはじめ、日本で有数の「米どころ」としても知られる山形県さがえ西村山地区。豊かで寒暖差のある自然環境と生産者のたしかな技術によって、「さくらんぼの王様」といわれる佐藤錦など、四季折々の美味しい食べ物を全国にお届けしています。
そんなさがえ西村山地区に拠点を置き、山形県の中央エリアを管轄するJAさがえ西村山では、2023年より「環境にやさしい栽培技術」と「省力化に資する先端技術等」を取り入れた「グリーンな栽培体系」を目指し、新たな取り組みをスタートしています。
気候変動問題が世界中のイシューとなる中で、全国の生産者にはカーボンニュートラルの実現に向けて化学肥料の低減が求められています。(みどりの食糧システム戦略)
とはいえ、化学肥料を減らすと、収入減少の怖さがあり、生産者にとって大きな負担を強いる可能性があります。そこでJAさがえ西村山では、バイオスティミュラントという新しい農業資材に着目し、生産者の負担を軽減する、新しい栽培方法の開発に挑戦しています。
【引用元】バイオスティミュラント 活用による 脱炭素地域づくり協議会
特に、栽培過程で生じる「ゴミ」である食品残渣からバイオスティミュラントを生産することで、「食品から食品」を生む環境負荷の低い栽培を実現し、気候変動に負けない、持続可能な産地を目指しています。
現在、さがえ西村山地区では「さくらんぼ」「桃」「りんご」「米」「なす」の5品目でこの取り組みを実施しているそうです。ぜひ、気候変動問題に果敢に取り組む産地の商品を購入して応援していきましょう!